法定相続情報証明制度のメリット・デメリット
1 戸籍謄本類の代わりに使える法定相続情報一覧図の写し 2 法定相続情報証明制度の概要 3 法定相続情報証明制度のメリット 4 法定相続情報証明制度のデメリット 5 法定相続情報一覧図を利用すべき場面 6 法定相続情報一覧図は状況によって使い分けることが大切
1 戸籍謄本類の代わりに使える法定相続情報一覧図の写し
相続手続きを進める際には、基本的には被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本や除籍謄本を収集し、さらに相続人全員の戸籍を揃えたうえで、相手先に提示する必要があります。
しかし、一般的に戸籍関係の書類は多く、金融機関や法務局などにおける相続手続きの場面ごとに、同じ資料を何度も提出しなければならないという不便さがありました。
場合によっては、戸籍の原本の還付を受けるまで時間がかかり、その間は別の相続手続きを進められないということもあります。
このような煩雑さを軽減するため、平成29年に法定相続情報証明制度が導入されました。
この制度を利用することで、戸籍一式を何度も提出する代わりに、法務局が発行する法定相続情報一覧図の写しを利用できるようになります。
以下、この制度の概要と、利用する際のメリットおよびデメリットについて説明します。
2 法定相続情報証明制度の概要
法定相続情報証明制度とは、相続人が収集した戸籍関係書類をもとに法定相続情報一覧図を作成し、登記所(法務局)に申出をすることで、その内容を確認した登記官が認証済みの写しを交付する制度です。
認証済の法定相続情報一覧図の写し(以下、「法定相続情報一覧図」と呼びます)は、相続関係を証明する公的な資料として、相続登記の申請や、金融機関での預貯金解約・払い戻しなど、各種相続手続きに利用することができます。
交付は無料であり、複数部を請求することも可能です。
3 法定相続情報証明制度のメリット
⑴ 戸籍一式の提出を繰り返す必要がない
例えば、相続人が複数の金融機関で被相続人の預貯金解約の手続きを行う場合、都度窓口に戸籍一式を提示しなければなりません。
被相続人と相続人の関係によっては、戸籍謄本類は数十枚に及ぶこともあります。
窓口に持参する際に、漏れなく揃っているかを確認しなければなりませんし、金融機関の担当者も抜け漏れがないかを確認しますので、手続きに時間がかかる可能性もあります。
法定相続情報一覧図を用いれば、一般的には一枚提出するだけで足ります。
⑵ 複数部を無料で取得できる
法定相続情報一覧図は、無料で取得することができます。
また、一回の申出で複数枚を請求することができ、追加での交付も可能です。
戸籍謄本類は、紛失や汚損をしてしまうと、再度市区町村の役場などで手数料を支払って取得しなければならなくなります。
法定相続情報一覧図は、予め複数枚取得しておくことで紛失や汚損に備えることができます。
また、複数部を用意することで、相続手続きを並行して進めやすくなります。
⑶ 相続登記の効率化
相続登記においては、戸籍一式を法務局に提出する代わりに、法定相続情報一覧図を利用することができます。
戸籍一式を使用する場合、原本をすべて提出する必要があります。
そして、申請の際に原本還付という手続きをしておくことで、一定期間経過後に戸籍一式が還付されます。
その間、他の相続手続きを進めることができなくなる可能性があります。
一方、法定相続情報一覧図は複数枚取得することができるので、そのうちのひとつを相続登記に用いることで、他の相続手続きも並行して進められます。
⑷ 金融機関等での手続きが早くなる可能性がある
金融機関等で預貯金の解約や払い戻し、有価証券の名義変更をする際、担当者は戸籍一式を精査する必要がなくなり、法定相続情報一覧図を確認することで相続人を特定できます。
そのため、窓口でのやり取りがスムーズになり、手続きが進みやすくなります。
4 法定相続情報証明制度のデメリット
⑴ 法定相続情報一覧図を取得するための時間と手間がかかる
法定相続情報一覧図は、申請しただけで法務局が作成してくれるわけではありません。
まず、相続人自身(または代理人)が、すべての相続人を確定させるのに必要な戸籍謄本類を収集し、自ら一覧図を作成してから申出を行う必要があります。
申出から交付までに数日から数週間を要することがあり、相続手続きを早急に進めたい場合には逆に障壁となる可能性があります。
戸籍謄本類を収集した後、さらに申請をしなければならないため、戸籍関係書類の収集に時間がかかると、一覧図の作成・交付も遅れることになります。
⑵ 利用できる場面が限られる可能性がある
法定相続情報証明制度が設けられたのは平成29年であり、戸籍制度と比べ新しい制度であるといえます。
そのため、必ずしもすべての相続手続きの相手先で使用できるとは言い切れません。
現在では使用できる相手先は多いと考えられますが、念のため事前に確認しておくことが望ましいです。
5 法定相続情報一覧図を利用すべき場面
上述のメリットとデメリットを踏まえると、法定相続情報一覧図は、特に複数の種類に及ぶ相続財産があり、金融機関や法務局など複数の相手先で相続手続きを行う必要があるケースで利用するとメリットを活かすことができます。
逆に、財産が少なく手続き先が限られる場合には、法定相続情報一覧図を申請する手間が増えるだけになることもあります。
6 法定相続情報一覧図は状況によって使い分けることが大切
法定相続情報証明制度は、相続手続きの負担を軽減するために導入された制度です。
戸籍一式の提出を省略できる点や、無料で複数部を取得できる点など、相続人にとって多くのメリットがあります。
その一方で、法定相続情報一覧図の申請に一定の手間や時間がかかるというデメリットもあります。
したがって、この法定相続情報一覧図を使用するか否かは、相続財産の内容や手続きを行う先の数、相続人間の状況などを踏まえて検討することが大切です。
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